WINDVANE

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吉本隆明「開店休業」
食の雑誌「dancyu」で、吉本隆明さんの連載の巻頭エッセイ「おいしく愉しく食べてこそ」に、
2007年1月から4年間に渡って、私は、毎月イメージ写真をつけさせてもらっていました。
吉本さんは、昨年2012年3月16日、87歳で旅立たれたのですが、
40回分の連載をまとめたものがこの度プレジデント社から出版されました。
このエッセイは、吉本さんの自筆で書かれた最後のものとなります。
そして、吉本さんの長女の漫画家のハルノ宵子さん(よしもとばななさんのお姉さま)が、
今回このエッセイ1章1章に追想を書かれています。
これがまたとてもすばらしいのですが、私には、ご両親へのラブレターのように感じました。
吉本さんの毎回胸がキュンとするエッセイに、宵子さん節のきいた追想。
食の話は家族の話に、結局は行き着くので、これを読むと、吉本家の皆さんは、
実にユニークで、膨大なエネルギーをもつメンバーで構成されていたんだな、って改めて思いました。
そして、吉本さんの最後のお仕事に関わらせていただいたことは、私にとっても、とても貴重な体験でした。

***
2006年の秋に新宿のgalleryユイットで、「雪を待つ」という、
セルビアで撮った作品で個展をしていたときに、
dancyuの編集者のEさんが見にきてくださり、
その場で、「吉本さんのエッセイにイメージ写真をつけませんか?」、
と声をかけていただいたことがこの連載に関わるきっかけでした。

それから、4年間、Eさんとご自宅に原稿をいただきに伺がっていたのですが、
吉本さんのお顔を拝見するのが、月に1度の私の密かな楽しみでした。
日本を代表する思想家であり、「知の巨人」、と言われた吉本翁ですが、
実際お会いすると、とても気さくで、照れ屋な方のようにかんじました。

実は、原稿をお書きになるのが大変遅く、毎回入稿がギリギリになることが常だったのですが、
それでも原稿を落とされることはほとんどありませんでした。
毎月、書きあがりほやほやの手書きの生原稿を直に受け取り、
それを1番最初に読むことができ、そして、毎回胸がキュンとする素敵なエッセイに、
Eさんとイメージ写真をあわせていく作業は、本当に楽しかったです。

そして、ほんの時々でしたが、お座敷にあげていただき、お茶を飲みながら、
猫ちゃんと遊び、世間話をさせていただいたこともとてもいい思い出になっています。

そのときに、お話しさせていただいた中で覚えているエピソードを1つ書きます。

私が、「なんで今の世の中って」、みたいな世の中に対しての質問というか愚痴みたいのを言ったときに、
吉本さんは、
「僕は宵っ張りで、夜中よくテレビを見ているんですが、たまにいい番組をやっていたりしてね、
世にでてこないような普通の人がでてきて頑張っていたり、よいことをしてる人たちがけっこういることを見ていてね、世の中捨てたもんじゃないんだ、って思っているんですよ」、と言われたんです。

私はそのときに、吉本さんという人は、そうやってこの世の中を見て信じていたのかって、思ったことを
とても印象深く覚えています。
「世の中捨てたもんじゃない」、
これは、私にとってはすごく大事なことを教えていただいたなって思っています。

吉本さんの最後のお仕事に関わらせていただいたことは、
私にとって、宝物のような大事な思い出になりました。
そして、余談ですが、亡くなられた3月16日というのは、
実は、太の誕生日(3月17日)の1日前なので、ずっと忘れられない命日になったのでした。

DSCN0117_01.jpg
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